誰でも「速く走りたい」と思うことはあるものの、「走る」動作そのものについてはあまり深く考えることはないですよね。
100mを9秒代で走る人もいれば、15秒以上かかる人もいます。
両者は身体の何が違うのでしょうか。

このページでは、短距離走の「走り」について細かく見ていきます。

「走る」サイクル -走周期-

自分が走る時、どのような動作を行っているかイメージしてみてください。
交互に足を前に出して、地面を蹴って身体を前へ移動していますね。その繰り返しです。
繰り返しの1サイクルを「走周期」と呼びます。

走る画像

走周期には、足が地面に接している「接地期」と、両足ともに地面を離れている「滞空期」があります。

接地期 ~足が地面に着いている時間~

接地期は、足が地面につく着地→体重の支持→後方へ地面を蹴る離地、の順番で前方へ加速する動作をしています。
着地の際に地面から受けるマイナスの力(抗力)をエネルギーとして蓄え、離地の際に地面を蹴るプラスの力(推進力)に変えます。いわば「バネ」の動きですね。
この「バネ」の性能が良いほど、身体を前方へ大きく進めることができます。

滞空期 ~両足が地面から離れている時間~

滞空期は、地面を蹴った足を後ろから前へ移動させるための時間です。
この時間は体が地面から離れていて前方への加速ができませんので、この時間は短いほうが良いです。
それには、キック足が後方へ加速するマイナスの力を前方へ移動させるプラスの力に変える「バネ」の性能が良いほど、キック足が素早く運ばれ、滞空期の時間を短くできます。

接地期・滞空期ともに、マイナスの力をプラスに変える身体の「バネ」が重要ということです。

短距離走の4つの局面

次は、短距離走全体について見ていきましょう。

短距離走はマラソンと違って最初から最後まで全力で走るスポーツですが、ずっと同じスピードではないですね。
100m走のスプリンターの走りは、4つの局面に分かれています。

短距離走画像

スタートダッシュ

「位置について、用意、ドン!」の合図から体が動きだすまでの時間です。
人の反射神経によって差はありますが、トレーニングした人で0.1秒、していない人でも0.5秒と、その差は1秒もありません。
0.1秒を争うトップスプリンターは別として、100m走全体から見ると、それほど大きな差ではありません。

加速

スタートしてからスピードが上昇していく局面です。さきほど述べた身体の「バネ」が加速を生み出す原動力となっています。
どれだけ短い時間でスピードを上げていくことができるか、また、どこまでスピードを上げることができるか、短距離はこの局面が一番重要です。
トップスプリンター同士であれば、最初の1歩の加速の違いで優劣が決まってしまうほどです。

トップスピード

40m~70m付近で最高速度に到達して等速になります。加速の限界の速度ですね。
もちろん、この速度が大きいほどタイムの短縮になります。
さきほど述べた加速の能力が向上すればトップスピードも上昇します。

減速

70mすぎからスピードが下がっていきます。短距離走のように短時間で最大の努力をするいわゆる無酸素運動は、最高の力を長く維持することができません。
人はだいたい6~8秒が限界です。無酸素運動で発揮できるエネルギーに限界があるため、どうしても疲労して減速してしまいます。
動物の最高のスプリンターであるチーターでも、わずか9~10秒で限界のようです。
この減速が遅いほど確かにタイムは良くなりますが、100m走のように短い距離ではわずかな短縮にしかなりません。

余談ですが、減速しつつも全力疾走を続けるとどうなるのでしょうか。
疲労物質である乳酸が蓄積されて供給エネルギーが少なくなっていき、だいたい40秒ぐらいで無酸素運動の限界になります。
距離にするとトップスプリンターでは400mです。
人間の限界まで全力疾走する400m走は人にとって最もつらい運動ではないでしょうか。
さらに長い距離を走る場合は、脂肪などを使った有酸素運動になります。
この運動でエネルギーが枯渇することはないですが、供給速度が遅く短距離走のような激しいスポーツには向きません。

まとめ

「走る」周期と短距離走の局面を見ていきましたが、どちらにしても速さを生み出す原動力は身体の「バネ」でした。
次回は、身体の「バネ」について解説したいと思います。