10月21日に福岡県で行われた全日本実業団対抗女子駅伝予選会で、2区を走った岩谷産業の飯田怜選手(19)が残り約200メートル地点で転倒し、道路をはってタスキをつなぎました。
この場面がテレビで中継され、議論を呼んでいます。
福岡県で行われた全日本実業団対抗女子駅伝の予選会で、足をけがした選手をレースの途中で棄権させようとチームの監督が大会主催者に申し出たにもかかわらず、選手が四つんばいで進み、タスキをつなぎました。大会の主催者は、現場での連絡が円滑に… https://t.co/JMrrjhvu4t
— NHKスポーツ (@nhk_sports) October 22, 2018
右脛骨(けいこつ)骨折を起こしていた
全日本実業団対抗女子駅伝予選会(福岡県)で、倒れて走れなくなり、四つんばいになってタスキを渡した岩谷産業の2区・飯田怜が骨折していた右すねの手術を受けることが判明しました。
岩谷産業の広瀬監督は、飯田の状態について「骨が折れた状態なので、修復する手術をします」と説明しました。
飯田は右脛骨(けいこつ)骨折で全治3~4カ月と診断されました。
21日のレース後に福岡県内の病院に入院しましたが、近日中にチームがある関西の病院に移って修復手術を受ける予定です。
2度の破棄申請が見送られた
問題のアクシデントは、先ず飯田は残り200メートルで走れなくなり、四つんばいで進んでいる映像を見た広瀬監督(53)は「やめてくれ」と棄権を申し出たが、コース上の審判員は本人の続行意思を聞いてストップをちゅうちょしてしまいました。
再度、同監督に意思を確認したそうです。
監督の答えは同じだったが、タイムラグがあって飯田は両膝をすりむきながらあと約15メートルに到達していました。
そこで審判員は破棄要請を見送ってしまったのです。
飯田のアクシデントは「感動した」「止めるべき」と賛否両論を巻き起こしています。
「これは美談ではない」
このアクシデントを「美談」とする風潮について、同チームの広瀬永和監督は「これは美談ではない」と指摘します。
広瀬監督はこの日「審判長が止めるとか、医者が止めるとか(基準が)大会によって、ではなく、誰が止める権限を持つのかはっきりしてもらいたい。
統一のルールを決めないとダメだと思う」と主張しました。
棄権はコース上の審判員に“差し戻された”形で、結果的にチーム側の2度にわたる棄権要請は実現せずレースは続いてしまった。
同監督は「(チームの申し出が通らず)大会側が止める権限を持つなら大会側でもいい。
ただ(続行による結果への)責任を持ってください」と指摘しました。
【膝つき駅伝 監督「美談違う」】https://t.co/m1lJfgNEsk
全日本実業団対抗女子駅伝予選会で、岩谷産業の選手が四つんばいでたすきを渡したことについて、監督は「『美談』とかいうのは…。ちょっと違う」と指摘。選手は骨折しており、手術する。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) October 24, 2018
広瀬監督はさらに、「これは美談じゃない。
200メートルも膝を引きずって今後どうなるか。
影響があるのか、本当に復帰できるのか。
今の時点で何ともいえない。
それを『頑張った』とか『美談』とかいうのは…。
アスリートファーストを考えると、ちょっと違うのではないでしょうか?」と違和感を口にしていました。
ファンの声
多くの駅伝ファンからも主催者側の責任を問う声が上がっています。
代表的な意見をまとめてみますと:
・広瀬監督は「やめてくれ」と主催者側に伝えたのに、チームの棄権の意向を伝えられた審判は「選手に続行の意思がある」と、意向を“差し戻して”同監督に再確認している。
・現場責任者から棄権や中止の要請を受けた審判や係員はランナーを止めるべき。
・チームの現場責任者が棄権を申し出た以上、「いけそうだ」「残り15メートル、あと少し」などという審判の主観はいらない。
・続行によって選手生命に影響が出るかもしれない。
以上のように、このようなアクシデントが起きた場合は、選手の気持ちとは別に、現場のチームの責任者、今回の場合は広瀬監督の判断で中止が出来るようにしなくてはならないという意見が多いようです。
主催者側の今後の対応
主催の日本実業団陸連の鎌倉光男事務局長は「手順が明確でなく、連携が悪かった」と認めています。
また、日本実業団連合は、11月25日のクイーンズ駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝)本大会までに改善策を提示する方針だと明らかにしています。
日本実業団連合の友永義治専務理事は「審判は目の前に選手がいるので(ストップを)ちゅうちょした」と認めた上で「より迅速に物事を伝える態勢を構築したい。
クイーンズ駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝)までにやっていく」と対応する考えを話しています。
【骨折も駅伝 連絡法を見直しへ】https://t.co/r1L3GPzPfI
全日本実業団対抗女子駅伝予選会で骨折した選手が、中継所まではって進んだアクシデントを受け、主催側は連絡方法を見直す方針。日本実業団陸上競技連合の会長は「選手の安全が第一」。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) October 22, 2018
広瀬監督が申し出た棄権が審判員の判断によって1度“差し戻された”ことについても「それも含めて検討すべきと思います」ともコメントしています。
統一したルール決定は難しい
同じ駅伝でも大会によって規模や距離が異なり、地域特性もあるため、一概にルールをつくるのは難しいという意見もあるようです。
しかし、一方で、箱根駅伝のように、監督を乗せた運営管理車が選手のそばを走り、監督や審判、競技役員は無線でリアルタイムに連絡を取り合える設備のレースもあるようです。
このような運営方法を見本に今後の駅伝をよりアスリートファーストの大会にしてもらいたいですね。
いろいろな問題はあるようですが、今現在、通信技術が進み、皆がスマホを携帯している時代に、選手を守るためにも、このような事態を防げるよう是非関係者に知恵を絞って欲しいと切にお願いします。