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近代五種 写真 1912年開催の第5回ストックホルム五輪大会から正式競技となった近代五種ですが、名前は耳にすることがあっても、正確にどのような競技か分からない人が多いのではないでしょうか。そこで、2020年東京オリンピックを目の前にしている今、優勝者が「キング・オブ・スポーツ」とまで称されるこの競技に付いて、少し勉強してみましょう。

クーベルタン男爵が近代五種の生みの親

この近代五種(modern pentathlon)とは、もともと古代ギリシアで行われていた古代五種(レスリング・円盤投・やり投・走幅跳・短距離走)になぞらえ、近代オリンピックの創立者であるクーベルタン男爵によって命名されました。 近代五輪 サイン 現代五種の基本は、1人の選手が、①射撃、②フェンシング、③水泳、④馬術と⑤ランニングの五つの競技をこなし、その総合順位を決める複合競技だということです。

我々には馴染みが薄いワケ

最初に述べましたように、「キング・オブ・スポーツ」と言われても、どうも近代五種には馴染みがないという人が多いのではないでしょうか?親しみがないのには幾つかの理由があります。 まず、以前は1日かけて各競技を1つずつ行っていたため、完了するのには5日間もかかり、5か所の競技場を移動しながら行われていました。そのような事情もあり、テレビではめったに生中継されることは無く、全ての競技が終ってから、「ハイライトシーン」の要約しか放送されないことが常でした。このような不便に対する苦情も出て、現在は全ての競技を1日で終了出来るよう、運営されるように、時間等が調整されています。 また、我々に馴染みが薄いもう1つの理由として、2016年のリオデジャネイロ大会までで、最もメダルを獲得しているのはハンガリーで、それに続くのがスウェーデン、ロシア、ポーランド、イギリスなどと(少ない例外はあるものの)、ヨーロッパ勢のみが圧倒的に強い競技だという点です。 更に、世界的に近代五種の選手は軍人や警察官が中心という事情もあるため、なかなか一般の人が競技に参加できないということもあります。

五種の競技を覚える方法

どこの国にも武勇伝があるように、19世紀のフランスの有名な騎兵将校をまつわる逸話があります。その騎兵将校はナポレオンに戦況の報告を届けるため、「騎乗で敵陣を突破しつつ(馬術)、銃と剣で相手構わず敵を次々と討ち倒した(射撃/フェンシング)と思うやいなや、川に飛び込み、向こう岸に渡ったと思いきや(水泳)、今度は丘を越え、野を越え、味方の陣営に走り込み(ランニング)、ついには任務を遂行したとさ!」(最後は少し「にほん昔話」風になってしまいましたが)。という大活躍ぶりだったそうです。 この勇敢なフランス将校の奮闘を思い浮かべて五種の競技を覚えれば、なかなか忘れない(かな?)と思います。実は、この逸話をベースにして、クーベルタン男爵が近代五種の五つの競技内容を決めた、というさらなる逸話さえあるのです。

近代五種の競技内容

オリンピックの近代五種は2000年大会から、男子と女子、それぞれの個人競技のみとなり、以前行われていた男子の団体は廃止となりました。それぞれの競技内容を分かりやすく説明してある東京オリンピック競技大会組織委員会の解説を紹介します: 近代五種 pic

1.フェンシング(エペ)

相手の全身に対して突きを繰り出す「エペ」で戦う。1分間1本勝負で総当たり戦を行い、勝率によって得点がつく。静かな対峙から相手の一瞬のスキをついて剣で攻撃するが、目にも止まらぬその攻撃は最新テクノロジーによってしか判定できないほどの速さをもつ。短時間に次々と試合を行うため、選手は1試合ごとの瞬発力の他、途切れない集中力も必要とされる。

2.水泳(200m自由形)

水中という体に負担のかかる環境で、全身の筋肉を絶え間なく動かし続けて200メートルを泳ぎ切る速さを競う。フェンシングで最も強く求められるのが瞬発力ならば、水泳で必要とされるのはパワーと持久力。ゴールした時のタイムによって得点がつけられる。

3.馬術(障害飛越)

貸与された馬を操り、制限時間内に競技アリーナに設置された様々な色や形の障害物を越え、コースを走る。単体競技としての馬術は、長年ともに練習し息を合わせた自らの馬に乗って競技を行うが、近代五種においては初めて対面する馬を短時間で馴らしながら障害と対峙しなければならない。そのためこの種目では、諦めず馬にアプローチし続ける粘り強さや柔軟さ、焦りを表に出さず冷静さを保つ精神力なども必要とされる。この種目のみ、得点は減点方式で計算される。

4.& 5. レーザーラン(射撃5的+800m走を4回)

これまでの3種目の得点を1点=1秒とタイム換算し、時間差を設けて上位の選手からスタート。射撃とランニングを交互に4回行い、着順を競う。射撃はレーザーピストルを使い、10メートル離れた場所から直径約6センチメートルの的に弾を5回命中させるのだが、5回命中するまでは50秒の制限時間の間、撃ち続けなければならない。ランニングは800m走だ。長い距離を走った直後、瞬時に全身の動きを静止させて息を整え、精密な射撃動作を行う難しさを想像してみよう。動から静、静から動への状態変化の激しさを思えば、この種目がいかに自身の身体・精神コントロール力を必要とされているかがわかる。静と動の切り替えの過酷さが見どころだ。このレーザーランでゴールした着順が最終順位となる。

近代五種の日本勢は?

上記の組織委員会の情報によりますと: 日本はローマ1960大会からバルセロナ1992大会までは毎大会出場していたが、アトランタ1996大会以降選手を送り出すことができなくなっていた。しかし北京2008大会に日本選手として16年ぶりに村上佳宏が出場を果たすと、続くロンドン2012大会では男子1名、女子2名が、リオデジャネイロ2016大会でも男子2名、女子1名が出場。 その背景には、最近までは競技の内容や用具の性質から自衛隊や警察出身の選手がほとんどであったが、一般使用のしやすい用具の選択などによって一般の間で競技人口が広がりつつあることが挙げられる。また日本近代五種協会も、水泳・コンバインドからなる「近代3種」を積極的に推進するなど、一般の人々への普及に努めており、選手層の拡大によって今後オリンピックでの上位進出も期待されている。

頑張れにっぽん

このハードな内容を知ると、なるほどこの競技の優勝者が「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれて当然だと納得させられます。まさに超人のみにしか争えない競技ですね。自国開催の2020年東京オリンピックでは、是非、近代五種の日本代表の男子選手も女子選手も共に素晴らしい成績を残せるよう、凡人の我々はせめて大きな声援を送りましょう。 近代五種 ポースター

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