35キロくらいから飛び出すのもいいのかな。とにかくアフリカ勢が自分の持っている力を出したら、日本勢は勝てない。奇襲するヤツがいていい
マラソン強化戦略プロジェクトリーダー: 瀬古利彦
日本陸連のマラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦さん(62)が2020年東京オリンピックのマラソンコースを歩き、重要だと思われる六ヶ所を克服するポイントを朝日新聞デジタル版(動画付)で説明しました。
「太陽ぎらぎら」瀬古さんと巡る東京五輪マラソンコース https://t.co/RetaJgEsBM
— 朝日新聞スポーツ (@asahi_sports) July 24, 2018
解説対象の六つの区間は:
1.新国立競技場(オリンピックスタジアム)をスタート~
2.富久町(約2km)~水道橋~神保町~神田~日本橋~
3.浅草雷門(約15km)~日本橋~銀座~増上寺~
4.銀座(約21km)~日本橋~神田~神保町~
5.皇居外苑(約33km)~神保町~水道橋~
6.富久町(約40km)~新国立競技場(オリンピックスタジアム)でゴール
瀬古利彦がコースを六つの区間に分けて解説
2020年東京オリンピックのマラソンコースが発表された直後から、多くのランナー達がそのコース全体や一部を自分で走ってみているようですが、猛暑の中、このコースの難しさを実感したようです。
観光コースとも呼ばれているほど、東京の観光名所を回りますが、予想される猛暑と幾つかの要注意区間があるようです。
以下は記事の中のビデオの6セグメントに合わせて分けられた概要です。
第1セグメント:【新国立競技場】「建設着々、もうこんなに」(動画時間1分12秒)
・対象の区間は建設中の新国立競技場(オリンピックスタジアム)のスタート~
・コース全体の特徴:「コース自体は全体的に平坦で走りやすい」が、勝負どころは、33キロ付近の皇居二重橋の折り返し点と40キロ付近の新国立競技場につながる新宿区富久町にある「安保(あぼ)坂」だと瀬古さんは指摘します。
第2セグメント:【富久町の下り坂(約2km)】「ここで調子に乗らないで」(47秒)
・対象の区間は富久町~水道橋~神保町~神田~日本橋~
・区間のポイント:スタートからまだ約2キロ地点で二つの登りと下り坂がある。下り坂の走り方に注意が必要。ブレーキをかけない、しかし、スピードも出しすぎないように気を付けることが大切、と瀬古さんは注意します。
第3セグメント:【雷門前(約15km)】「ペースメーカーがいないので…」(32秒)
・対象の区間は浅草雷門~日本橋~
・区間のポイント:オリンピックにはペースメーカーはいなため、この15キロ地点ではほとんど遅れる選手はいないと想像する。よって、スローペースで大混戦状態のまま浅草寺の雷門前の大観衆の前にランナー達が現れるでしょう、と瀬古さんは予想します。
第4セグメント:【銀座(約21km)】「大通り、ビル壁の影響は」(59秒)
・対象の区間は銀座~日本橋~神田~神保町~
・区間のポイント:ここにも大観衆が選手達を迎えることになるでしょう。高いビルとビルの谷間を走ることになるが、建物が太陽の光を遮るので、暑さを和らぐ効果が期待できるため、ランナー達には走り易い区間、と瀬古さんは期待します。
第5セグメント:【皇居二重橋(約33km)】「スタミナぎりぎり太陽ギラギラ」(1分34秒)
・対象の区間は皇居外苑~神保町~水道橋~
・区間のポイント:瀬古さんは皇居前の内堀通りを「太陽を遮るものが何もない。太陽ぎんぎんぎらぎら、大変なコースだと思う」。折り返しについても「いいペースで走ってきているところを一度落とさないといけない。リズムが狂ってしまう」と指摘する。消耗度合いによっては、再びのペースアップが難しい。「ここで遅れたら厳しい勝負になるよね」
第6セグメント:【富久町の上り坂(約40km)】「最後の難所、坂はこう走れ」(1分15秒)
・対象の区間は富久町~新国立競技場(オリンピックスタジアム)
・区間のポイント:特に勾配がきついのが40キロ付近、靖国通りの安保坂。「相当きつい坂だけど我慢できないほどではない」。瀬古さんいわく、「だらだら続く坂より急坂の方が走りのアクセントにもなって攻略しやすいんだ」。安保坂を越えると、一度下って、競技場手前でもう一度上る。「先行しているアフリカ勢が消耗して上り切れない可能性もある。とにかく粘り強く走ることが大事。」このきつい上り坂を克服するコツは、腕を大きく振って、上を見ないでひたすら下だけを見て走ることだと瀬古さんはアドバイスします。上を見ると「恐怖」を感じてしまうそうです。
今後の対策について
東京五輪マラソン参加者全員の大敵は暑さとなるのは間違いありません。そこでコース上はセラミックなどの遮熱材を吹き付けた「遮熱性舗装」が施される計画です。国土交通省の計画に瀬古さんは以前から協力してきて、「選手に優しい道路。このあたりは日本の技術を最大限生かしたい」と期待しています。
また、日本選手に対しては、オリンピックの代表選考会となるマラソン・グランド・チャンピオンシップ(MGC)もほぼ同じコースで来年9月15日に実施されるので、瀬古さんの願いは、MGCを通して「夏にどういう練習を積めばいいのか、選手は実感して欲しい」と語っています。
さらに、日本選手の勝算について、「メダル獲得の目安は男子で2時間10分前後、女子で2時間26分前後。このタイムなら日本選手も十分に戦える」と瀬古さんは期待を語っています。
そこで、瀬古さんが現役で走るとしたら、どんな作戦を立てるのだろうかと聞かれて、「瀬古はトラック勝負とみんな思うだろうから、35キロくらいから飛び出すのもいいのかな。とにかくアフリカ勢が自分の持っている力を出したら、日本勢は勝てない。奇襲するヤツがいていい」と具体的な作戦を披露しています。